私は現在、活鰻事業部で副支店長をつとめています。活鰻事業部では、鰻の養殖、蒲焼・白焼などへの加工、卸売販売を行なっています。私がフジ物産に入社したのは、27歳の頃でした。実は最初はアルバイトでお手伝いしたことからはじまりました。
当時、フジ物産で課長として活躍していた方とよく食事をご一緒していて、私が前職の飲食業界の会社を辞めた時に、「まずはアルバイトでもいいから、うちの会社を手伝ってくれないか」と言われたんです。飲食業界から、鰻に集中したという形になります。
そこから2年くらい加工課で蒲焼・白焼きなどの鰻加工の業務を経験して、その後活鰻事業部付けで社員になりました。現場での業務に加えて営業の業務を引き継いで楽しく働きました。ずっと楽しかった記憶があるというのが幸せなことだと思います。
活鰻事業部のある高知県や本社のある静岡だけでなく、茨城県のひたちなか市や兵庫県の三田市にも赴任していましたが、赴任先のいい人たちにも恵まれて、充実した日々でしたね。
活鰻事業部は、社内でも「勢いがあるね!」と言われることが多いです。自分としては、「勢いがある」というより、かしこまったいわゆるサラリーマン気質の部署ではないという感覚です。
必要以上の上下関係もなく、思ったことを素直に発言できる人間関係がありますし、忙しい時期は必死にみんなで乗り越えよう、わいわいやっていこうという一体感がありますね。
予め考えて行動するより、まず行動を起こして学ぶ人が多いので社内から「勢いがある」と見られるところも確かにあります。ですが、そんな人たちについていき、どんどん目的に向かっていくのもまた楽しいところかなと。
私自身、学生時代はサッカーをやっていて筑波大学のサッカー部に所属していたこともあり、同級生には何人かプロになった選手がいました。弟もプロバスケット選手をやっていたり、私にとってプロアスリートは身近な存在です。前職でも現役選手のマネジメントを行っていましたが、彼らのセカンドキャリアについての課題、問題意識は日を増すごとに強くなりました。
次のキャリアの選択によっては、客観的には大失敗に見えてしまうこともある。自分がこの課題に対して手助けできる存在になりたいと強く思ったんです。
フジ物産としても、山﨑社長もこの社会問題に対してしっかり取り組んでいきたいという想いを持っていました。会社として複数のチームをスポンサーする中で選手との接点を持ちますが、アスリートの戦力外通告などの現実、その後を見ていくと社会的にも取り組む価値があると思ったんです。
キャリアの話とは少し変わりますが、フジ物産は商社です。海産物を卸したり、鰻に関わる事業を行っていたりします。栄養満点な鰻をアスリートに提供することができるし、スポーツを見ながら食べる食事も提供していける。
このスポーツと既存事業とのシナジーは社内全体でも高められればなと思っています。スポーツの力でもっと他の業界を盛り上げる、他の業界をスポーツで盛り上げることができると思っています。
活鰻事業部のパーパスは「全世界のあらゆる人々に、鰻を通じて美味しいと健康と笑顔を提供する」です。「あらゆる人々」は、特に2つの方面を意識して作られたものです。
まず1つめは、「近年鰻を食べる機会が減っている若年層」です。鰻を食べるのはご年配の方々が一般的で、若年層が鰻を食べる機会が減ってきています。愛知の小学校の給食に鰻が提供されたことが数年前にニュースになったほどです。
全国の学校給食で鰻が提供されれば、これ以上のことはないと思うのですが、どうしても価格面が高いので予算的に難しいようです。しかし、鰻は健康食材でもありますので、若年層に食べていただくことができるようにやれることをやっていくつもりです。
2つめは、「まだ鰻を食べたことがない外国の方々」です。海外にお住まいの方へ鰻の魅力を届けるためには、国内向けに製造・販売する鰻とは差別化する必要があります。まず、国によっては「鰻の見た目がちょっと…」と感じる方も多いので、加工した上で見た目を整えていくことが重要です。
次に、美味しいうえで流通量も増やしながら原価も抑えていかないといけない。原価と生産量のバランスをみながら、場合によっては国産の鰻にこだわりすぎず、美味しい鰻を提供することも大事になります。国内向けの販売と海外向けの販売はしっかりと切り分けて、お客様に提供していきたいです。
「まだ鰻を食べたことがない外国の方々」への鰻の普及に関連して、そして時流に沿った取組のひとつとして「ハラル認証の鰻」の提供を始めます。ハラルフードはイスラム教の人でも食べることができる食べ物のことで、たとえば材料や調味料に豚を使っている食品はハラルフードにはなりません。
ここは事業部としては大きなチャレンジとなります。ハラル認証で、まずは1つでも実績が確立できればと思っています。立ち上げにあたって難しい部分もあると思いますが、まずはやってみる。扱ってもらう。その上で、何か動きがはじまる。
私は商売とはそういうものだと思っていますので、まずは良いハラル認証の鰻を作ってみています。海外の方を「蛇みたいな見た目だと思ったけど、すごい美味しい…」と驚かせたいですね。
このプロジェクトは、販売量や売上高次第では桁違いの結果を生み出す可能性を秘めています。ただ、ハラル認証はあくまでも海外販売のための重要な要素の1つにすぎないとも思っています。インドネシアやシンガポールのような、ハラル認証がほぼ必須で求められる国もあれば、インドのように一部の民族のみがハラール認証を求める国もあります。どの国、さらにはどの民族をターゲットにするべきか、という話も開発と同時に進めていかなければなりません。
加えて、ハラール認証の鰻は通常の鰻に比べてどうしても単価的には高くなるためそうしたターゲットの中でも特に富裕層へ向けた販売戦略を構築する必要があります。
活鰻事業部のメンバーとしては、「変化を見逃さない姿勢」が常に求められると思っています。会社として成長するために、会社が生き残っていくために、変化の激しい「鰻の市場」をしっかりと注視しなければいけません。
正しい情報を集め、正しい意思決定をしなければ事業が成り立たなくなってしまいます。たとえば稚魚がなかなか育たずに鰻の単価が上がってしまうこともあれば、反対に供給が過剰になり相場の価格が落ちてしまうこともあります。養鰻場にいる鰻の価格が半分になってしまい、そのことで会社が傾きかけるということは業界として珍しくありません。
「株」や「金(きん)」と同じように考えれば、鰻の市場は変化も激しいと思いますし、メンバーには鰻に関する情報のアンテナを張り巡らせる力と、判断できる力が必要です。
これから入社いただく人には、特に若い世代の方に入ってきてほしいなと思っています。弊社に入社した若い社員が活躍しているのを見ると、若い力がエネルギーとなって周囲に伝搬しているなと感じます。
若い世代に教える・伝えることはもちろんですが、同時に彼らから教えてもらう立場でもありたいなとも思っています。例えば僕たちの世代はパソコンやインターネットに慣れ親しんできた世代ではないので、そういう面においても教えてもらいたい。
これから先、新しい加工場が建設できるようなことがあれば、アルバイトや正社員を問わず「雇用の創出」という側面から地元に貢献ができると思っています。「フジ物産の活鰻事業部」を通して地元の貢献に繋がるという意味でも、「地域への貢献・還元」に取り組みたいという意志のある方にも入っていただきたいですね。