私は高知県にある鰻専門店、鰻HASHIMOTOで一番弟子として2022年から働いています。料理の提供はもちろん、「一番弟子」として店主の橋本さんから技術を受け継ぐための修行に励んでいます。
また店舗の業務だけでなく、高知支店にある鰻を加工する部門での業務にも参加させてもらっています。忙しい時には10tもの鰻を捌くこともあります。ちょうど今朝も高知支店で鰻を捌いていました。修行の傍ら、支店の業務に参加することで場数を踏むことができるので、貴重な経験ですね。
私は福岡出身なのですが、高知の魚はとにかくレベルが高くて、「ここでもっと魚について学びたい」と思い高知県で就職をしました。保育園くらいのころからパン屋さんになりたいと思っていて、中学生になる頃にはすでに料理人になりたいと思っていました。
高校を卒業したら専門学校に行こうとも決めていて。ただ、この業界ってやっぱり厳しい世界なので担任の先生には栄養管理の方面に進むのもどうかと勧められたりもしていました。でも結局、想いを貫いて調理師学校に入って高知で料理人として就職しました。
高知で働くことは決めたものの、働いていくうえで自分にとっての武器になるものが欲しいと思っていた時に、ちょうど鰻HASHIMOTOの求人を見つけて応募しました。「一番弟子を募集」する求人はあまり見たことがなかったので、びっくりしましたね。
アシスタントや指示したものを作るような求人はあるんですけど、技術を継承させてくれるのはなかなか見るものではありませんでした。
鰻は本当に奥の深い世界です。最初は捌いて串打ちするのも苦労しました。橋本さんの職人技を間近で見て、やり方を教わっているのにわからない。自分の中で橋本さんになりきってイメトレをしたりして修行していました。焼きの練習もかなりやっていましたね。
橋本さんの焼きは自分の中では見たこともないくらい美味しい焼きです。「自分もそれくらい美味しい焼きを」と思っていました。1年程練習をして、2023年末頃にようやく満場一致の100点をもらえました。「もうこれならお客様に出せる」と言ってもらえて。本当に嬉しかったですね。
これからもっと場数を踏んで、お客様に良い料理を提供していけるようにしていきたいと思っています。カウンターでお客様と話しながらも、かっこよくおいしく調理できるようになりたいです。
もともと、福岡にいたときからライブキッチン(目の前で料理して提供するスタイル)に強い憧れがありました。鰻HASHIMOTOもかなり調理場がオープンで、そこに魅力を感じたのも応募の決め手だったことを覚えています(笑)
今はここで日々いい学びができていて、本当に充実しています。人間関係もすごくいいですし、常に気にかけてもらっていてびっくりしています。この業界って本当に…厳しい世界だと思います。
専門学校でも気づけば卒業までに半分近くの同期が去っていました。そこからさらに、現場に出ていくともう半分になる、といった感じです。一緒に学んだ同期も7、8人しか現場で働いていないんじゃないでしょうか。
そんな世界で、小さい頃から目指していた料理人であり続けられているというのは、まだまだこれからですけど嬉しいです。
鰻HASHIMOTOを運営している飲食事業開発部では、「世界中の人々に期待を超える体験を提供し、元気いっぱいになってもらう!」をパーパスとして目指しています。正直、最初はパーパスってなんだろうという感じでピンときていませんでしたが、話しているうちに自分もとても共感できるので理解していきました。
鰻には希少価値があるので、もったいない部分が出ないようにしなければいけません。また高知は外国籍のお客様も多いので、鰻HASHIMOTOをきっかけに世界中の人に鰻を食べて、知ってもらいたいと思っています。
パーパスの実現のために特に私は認知してもらうこと、鰻HASHIMOTOの味を広めていくことが大事だと思っています。味が良くて人気があっても、高知で目立つだけではないと思っているので、SNSやメディアにも取り上げてもらいたいですね。
そのためには外観の良さ、店内の雰囲気、味、接客とどれをとっても最高のものにしていきたいです。小さい口コミから始まって、やがてそれが大きな波になるというか。
また、東京などに進出することにもチャレンジしていきたいです。店を出すのは簡単なことではないですが、私たちのスタイルや味が東京の人々に合うのか試してみたい。すべてがうまくいくとは限りませんが、その成功と失敗を乗り越えればお店の味を広めていくのも夢ではありません。
味を広めるのは何も現在だけではなくて、私は橋本さんの技術を後世に継承していきたいとも思っています。自分にできることがあるとするなら、この技と味を途絶えさせてはいけないなと。最初はそんなこと考えてなかったんですけどね…。
修行させてもらって一人前になって、ゆくゆくは自分で店を出すのかなくらいに考えていました。それもいいんですけど、自分のように教わる人がいればいるほど味を広めることにもなるので。それくらい、自分にとって鰻HASHIMOTOの味と技は大切なものになったんだと思います。